目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする

28 思い

 ローラの目の前には、恐ろしいほどの色気を纏い「男」の顔をした美しい魔術師が静かに微笑んでいる。今まで見たこともないその色気にあてられてローラはめまいがするほどだ。

(そ、そんな顔、あまりにも反則すぎる……!)

「ローラ様、これで嫌な記憶は無くなりましたか?」

 微笑むヴェルデに見惚れていたが突然そう聞かれ、ローラはハッとする。ヴェルデにされたことがあまりにも刺激的すぎて、ベリックにされたことなどすっかり忘れてしまっていた。

「は、はい。あまりの衝撃で、すっかりどこかに消えて無くなりました……!」

「それならよかった」

 嬉しそうに微笑むその顔は、さきほどまでの妖艶な顔ではなくいつものヴェルデに戻っていて、ローラは少しホッとする。

「あぁ、でも、嫌な記憶を無くすためとはいえ、急にあんなことをしてしまって申し訳ありません。ローラ様の気持ちも考えず……つい我を忘れそうになっていました」

 すみません、とシュンとした顔でうなだれるヴェルデ。

「いえ、そんな!ヴェルデ様は私のことを思ってしてくださったのですし、それに……」

 突然言いよどむローラを、ヴェルデは不思議そうな顔で見つめる。

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