目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
「俺の方がずっと身勝手ですよ。俺はあなたを絶対に手放したくない。どんなことがあっても、誰にも渡したくないんです。そのためだったら俺はどんなことでもします。それほど、あなたのことが好きで仕方ないんですよ。あなたを幸せにするのは、一緒に幸せになるのは俺じゃなきゃ嫌なんですから」

 ぎゅっとローラの両手を掴むヴェルデの手が強くなる。

「俺の気持ちはローラ様が思っているよりもずっと重くてやっかいです。逃げるなら今しかないですよ、と言いたいところですが、逃がす気ももうとうありません。……こんな俺だとわかって怖くなりましたか?」

 自嘲気味にそう言ってヴェルデは首をかしげる。そんなヴェルデを見つめ返しながら、ローラは首をふった。

「いいえ、むしろ嬉しく思えてなりません。きっと、ヴェルデ様が思っているよりも、私の気持ちも重くて複雑なのかもしれません」

 ふわっと微笑むローラに、ヴェルデの胸は今にも張り裂けんばかりだ。

 そしていつの間にかヴェルデはローラを抱きしめていた。

「ずっと俺の片思いだと思っていました。でも、違かったんですね。よかった」

 ぎゅううっとヴェルデが抱きしめる力を強くすると、すぐに体を離してローラの顔を覗き込む。ローラを見つめるその瞳は蕩けてしまいそうなほど甘くて優しかった。

 そのまま、静かにヴェルデの顔が近づいてくる。ローラは一瞬ひるんだが、すぐに瞳を閉じる。

 ヴェルデの唇が、そっとローラの唇に重なった。





< 110 / 112 >

この作品をシェア

pagetop