目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
「心配しなくても、こいつがあんたを絶対に守ってくれるよ。俺も微力ではあるけど協力するぜ。あんたはもう家族みたいなもんだからな」

「ありがとうございます、心強いです」

 また狙われるかもしれない。ヴェルデの側にいる限り、ヴェルデにもフェインにも迷惑がかかってしまう。そう思うとローラの気持ちはまた沈みそうになる。だが、フェインの真っすぐな眼差しと言葉に、心がやんわりとほぐれるのがわかった。

 丘の下を見ると、美しい自然と街並みが見渡せる。それを見ながらローラはほうっと息を吐いた。

(私は、ここでこれからもヴェルデ様と一緒に生きていくんだわ。この命が尽きるその日まで)

 百年も眠り続け、目覚めてから自分の居場所などどこにもないのだとローラは絶望した。だが、ヴェルデが居場所を作る、一緒に生きていこうと提案してくれた。戸惑うときも迷う時も、いつだって何度だってヴェルデは一緒に生きていこうと言ってくれたのだ。

 ヴェルデの美しい銀色の髪が風になびいてキラキラと輝いている。ジッと見つめていると、ヴェルデが視線に気づいて微笑んだ。フェインも二人を見て微笑んでいる。

(私の居場所。私の、大切な家族)

 二人を見て、ローラは嬉しそうに微笑んだ。







 それから数年後。


「グアッ!」

 ドサッと男が地面に倒れこんだ。男は魔法の鎖でがんじがらめにされている。その男を冷ややかな目で見下ろす一人の男。その男は銀色の髪を風になびかせていた。

「おい、こっちも終わったぞ。他にはいないみたいだな」

 魔法の鎖でつながれた男が宙を漂い、その近くから別の男がやってきた。その男に、銀髪の男が声をかける。

「ありがとう、フェイン」

「全く、懲りないやつらだな。何度人を送り込んできても同じだって言うのに」

 フェインがため息をつくと、ヴェルデは魔法の鎖で拘束された男たちを冷酷な瞳で見つめながら言った。

「何人来ようが誰が来ようが、ローラには指一本触らせない。絶対にだ」




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