目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
「ははは、意地悪をしてしまいましたね。わかっています。あなたがこの国にいて、しかも王家の中にいるのは色々とお辛いでしょう。……エルヴィン殿下のことも思い出してしまうでしょうし」

 最後の言葉に、ローラは口をきゅっと結んで辛そうな表情になる。それを見たヴェルデは胸が痛んだ。

「君がローラ様を連れて行くことに関して、私は異論はないよ。眠り姫のことは一般には公表されていないし、王家の中でもごく限られた人間しか知らないことだ。こういうことは本人の目の前で言うことではないのだが、王家の中でもローラ様をどうするかで意見が割れていてね。扱いに困っていたところだ。君が国外へ連れて行ってくれるなら願ったりだろう」

 メイナードの言葉に、ヴェルデは一瞬眉をピクリと動かしたが、何も言わずに話を聞き続ける。

「だが、君がローラ様を連れて行くことを良しとしない人間もいるだろう。もしかすると追いかけて奪還しようとする輩もいるかもしれない。それに、君の国がローラ様を快く受け入れてくれるともかぎらないだろう。そういう全てをふまえて、それでも君はローラ様を連れて行く覚悟があるのかな?」

 美しい瞳でヴェルデをジッと見据える。そんなメイナードを、ヴェルデは目をそらさずにじっと見つめ返した。

「もちろん覚悟はできています。我が国でのローラ様の居場所は私がつくりますし、何があってもローラ様をお守りします」

 力強く、はっきりとそういうヴェルデの言葉に、ローラは両目を潤ませてヴェルデを見つめた。そして、そんなヴェルデとローラを見て、メイナードは満足そうにうなずいた。

「いいだろう。それでは、国内での対応については私に任せてくれ。王にも私からうまいこと伝えておくよ」

 こうして、ヴェルデはローラを自国に連れて行けることになった。





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