目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
◇
それから数日が経ち、二人は馬車に乗って転移魔法陣のある管理所まで移動していた。
「転移魔法陣で国と国を繋いでいますので、魔法陣は管理所で監視と管理がされています」
ローラが眠りにつく百年前では考えられないことだ。ローラは魔法の発展に驚き、ヴェルデの話を目を輝かせて聞いていた。そんなローラを、ヴェルデは嬉しそうに見つめる。時折優しげな眼差しを向けられ、その度にローラの心臓は跳ね上がっていた。
(ヴェルデ様に見つめられるとなぜかドキドキしてしまう……!私なんかにそんな優しい眼差しを向けてくださるなんて、ヴェルデ様は本当に心の美しい優しいお方なんだわ)
馬車の外を眺めると、そこには美しい風景が広がっている。ローラは窓の外を眺め、目を細めた。
(美しい景色だけど、まるで見たこともない場所ね)
眠りにつく前、国内をお忍びでエルヴィンと共に周ったことがある。きっと今見ている景色も訪れたことがある場所のはずなのだが、目の前の景色は昔とは全く違う景色だ。
懐かしいと思うことすらできないほど、自分は眠っていたのだと思い知らされる。
ローラが感傷に浸り神妙な表情をしていると、ヴェルデの手がローラの手を静かに包んだ。突然のことに驚いてヴェルデを見ると、心配そうな顔をしている。
「ローラ様、疲れていませんか?目覚めて間もないというのに、馬車に乗るのはお体にあまりよくなかったかもしれませんね」
申し訳なさそうにヴェルデがつぶやく。
「だ、大丈夫です。他国へ行くのに馬車で半日、あとは転移魔法で移動できるなんて、私が起きていた頃には考えられないほどです。あの頃はエルヴィン様と馬車で何日もかけて国内を周ることもありましたし、こう見えて忍耐強いのですよ」
ローラがふわりと笑ってそう言うと、なぜかヴェルデは複雑そうな顔でローラの手を見つめる。どうしてそんな顔をするのだろうか、何か失礼なことでも言ってしまっただろうか。
「……ローラ様の中にはエルヴィン様との思い出があるのですよね。それを全て消したいとは思いませんが、私との思い出もこれから沢山つくってほしいと願ってしまいます。色々と落ち着いたら、いつか二人でこの国を一緒に周りましょう」
ニコッと微笑みながらヴェルデが言う。ヴェルデの言葉の意味がはじめはよくわからず、ローラは首をかしげるが、なんとなく察しがつくとローラは顔を赤らめた。
(そ、そんな、まるでエルヴィン様にやきもちをやいているような言い方をするなんて)
「私などと思い出をつくろうだなどと……ヴェルデ様はどうしてそんなことを言うのですか?」
思わずローラが尋ねると、ヴェルデは口の端に孤を描いてローラを見つめる。その顔は妖艶という言葉がぴったりで、ローラはドキリとしてしまう。
「それはもちろん、エルヴィン殿下に妬いているから、ですよ」
ヴェルデの直球すぎる言葉に、ローラの顔が一気に赤くなる。それを見てヴェルデは心底嬉しそうに笑いながら何かに気づき、外を見た。
「ああ、そろそろ着きそうですね」
それから数日が経ち、二人は馬車に乗って転移魔法陣のある管理所まで移動していた。
「転移魔法陣で国と国を繋いでいますので、魔法陣は管理所で監視と管理がされています」
ローラが眠りにつく百年前では考えられないことだ。ローラは魔法の発展に驚き、ヴェルデの話を目を輝かせて聞いていた。そんなローラを、ヴェルデは嬉しそうに見つめる。時折優しげな眼差しを向けられ、その度にローラの心臓は跳ね上がっていた。
(ヴェルデ様に見つめられるとなぜかドキドキしてしまう……!私なんかにそんな優しい眼差しを向けてくださるなんて、ヴェルデ様は本当に心の美しい優しいお方なんだわ)
馬車の外を眺めると、そこには美しい風景が広がっている。ローラは窓の外を眺め、目を細めた。
(美しい景色だけど、まるで見たこともない場所ね)
眠りにつく前、国内をお忍びでエルヴィンと共に周ったことがある。きっと今見ている景色も訪れたことがある場所のはずなのだが、目の前の景色は昔とは全く違う景色だ。
懐かしいと思うことすらできないほど、自分は眠っていたのだと思い知らされる。
ローラが感傷に浸り神妙な表情をしていると、ヴェルデの手がローラの手を静かに包んだ。突然のことに驚いてヴェルデを見ると、心配そうな顔をしている。
「ローラ様、疲れていませんか?目覚めて間もないというのに、馬車に乗るのはお体にあまりよくなかったかもしれませんね」
申し訳なさそうにヴェルデがつぶやく。
「だ、大丈夫です。他国へ行くのに馬車で半日、あとは転移魔法で移動できるなんて、私が起きていた頃には考えられないほどです。あの頃はエルヴィン様と馬車で何日もかけて国内を周ることもありましたし、こう見えて忍耐強いのですよ」
ローラがふわりと笑ってそう言うと、なぜかヴェルデは複雑そうな顔でローラの手を見つめる。どうしてそんな顔をするのだろうか、何か失礼なことでも言ってしまっただろうか。
「……ローラ様の中にはエルヴィン様との思い出があるのですよね。それを全て消したいとは思いませんが、私との思い出もこれから沢山つくってほしいと願ってしまいます。色々と落ち着いたら、いつか二人でこの国を一緒に周りましょう」
ニコッと微笑みながらヴェルデが言う。ヴェルデの言葉の意味がはじめはよくわからず、ローラは首をかしげるが、なんとなく察しがつくとローラは顔を赤らめた。
(そ、そんな、まるでエルヴィン様にやきもちをやいているような言い方をするなんて)
「私などと思い出をつくろうだなどと……ヴェルデ様はどうしてそんなことを言うのですか?」
思わずローラが尋ねると、ヴェルデは口の端に孤を描いてローラを見つめる。その顔は妖艶という言葉がぴったりで、ローラはドキリとしてしまう。
「それはもちろん、エルヴィン殿下に妬いているから、ですよ」
ヴェルデの直球すぎる言葉に、ローラの顔が一気に赤くなる。それを見てヴェルデは心底嬉しそうに笑いながら何かに気づき、外を見た。
「ああ、そろそろ着きそうですね」