目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
「いや、だがヴェルデの婚約者にするのはもったいないくらいだ。百年前とはいえ、ティアール国の第一王子の妃となる予定の女性だったのだろう。たたずまいも身のこなしも頭の回転も申し分ない。俺の妃にしたいくらいだな」

 ガレスはローラに近寄り目を細めて笑いながらそんなことを言う。王家の人間の言葉遊びのようなものだとローラは苦笑したが、すぐにローラの腕がグイっとひかれ、ヴェルデの腕の中に閉じ込められる。

(えっ!?)

 あまりに突然のことでローラは動揺しヴェルデの顔を見上げるが、ヴェルデは腕の力を緩めない。

「もうしわけありませんが、ガレス殿下であっても、ローラ様をお譲りすることはできません」

 はっきりと言い切るヴェルデに、ローラもガレスも驚く。そしてガレスは楽しそうに声をあげて笑い出した。

「はははは!そうかそうか、ヴェルデ、お前……そうか。はー、いや、すまない。からかいすぎたな」

 クククと笑いながらガレスはヴェルデの肩をポンポンと叩く。ヴェルデはそんなガレスをあきれたように見ながらはぁ、と静かにため息をついた。

(ガレス殿下は第一王子なのにずいぶんときさくな方なのね。ヴェルデ様との信頼関係がきっと厚いんだわ)

 ローラが二人を暖かい目で見つめ微笑んでいると、ガレスはそんなローラに気づいてニッと笑った。


「ヴェルデのこと、これからよろしく頼む。魔法のことしか頭にないやつだが、どうか見放さないでやってくれ」



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