目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
「そんな、ここでヴェルデ様と共に生きていくと決めたんですから、もうどこかにいなくなろうなどと思ったりしません」

「本当に?」

 そう言ってローラを見つめるヴェルデの瞳には、不安がこもっているのがわかる。

(私は、この方をこんなにも不安にさせてしまったのだわ。私は、本当になんて酷く、残酷なことをしてしまったのかしら……。せめて、この方の気の済むようにしてあげたほうがいいのかもしれない)

「本当です。……ですがヴェルデ様がこうすることで安心するのであれば、寝室は、……その、一緒でも構いません」

「本当に!あぁ、良かった」

 少し照れながら言うローラの言葉に、ヴェルデは目を輝かせて喜んでいる。優しく手を握りながらローラを見つめるヴェルデの瞳には、深い深い優しさが広がっていて思わずローラはときめいた。

(こんなに優しくされてしまうと勘違いしてしまいそうになる。でも、この方はきっと私を目覚めさせてしまった後悔と義務感からきっとこうして尽くしてくださっているのだわ。そんなことはないと言ってはいたけれど、きっと無意識なのではないかしら。それでも、こうして私のために心を尽くしてくださるのだから、早く安心させてあげたいわ)
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