目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
「……ローラ様、どこへ?」

 振り返ると、心配そうな、不安そうな、でも少し怒ったような顔でヴェルデが体を起こしていた。

「あ、あの、喉が渇いたので、飲み物をと思って……」

 まだ鳴りやまない心臓に気づかれないように、作り笑いをしながらローラは答える。だが、ヴェルデは心配そうな顔を崩さず、そんなヴェルデの顔を見るのが辛くなり、ローラは思わず目をそらしてしまう。

「どうか、なさいましたか」

「いえ、何も。大丈夫です、本当に喉が渇いただけですから」

「……ローラ様、私は、そんなにも頼りないですか?」

 静かだが、強い気持ちのこもったヴェルデの問いに、ローラはハッとしてヴェルデを見つめる。

「私はもっとあなたに頼ってほしいのです。あなたの不安や心細さに、辛さに、寄り添いたいのです。ですが、こんな私ではそれすらも叶わないのでしょうか」

「そんなことは……!」

 ローラが声を上げると、ヴェルデは寂しそうに微笑んでいる。その顔を見てローラは胸が苦しくなった。

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