目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
 中に入ると、思ったよりも広く感じる。ドアがいくつもあり、ヴェルデによると魔法薬の保管部屋や魔法陣を生成する部屋など重要な部屋がいくつもあるそうだ。そんな重要な部屋がある場所に自分がいていいのだろうかと思っていると、ヴェルデが優しく微笑みながらローラに言う。

「どの部屋にも専用の魔法によるカギがかかっていているので簡単には入れません、心配しなくても大丈夫ですよ。それから、二階は寝泊りする用の部屋です。ここには私の仕事を手伝ってくれている人間が何人かいるのですが、研究内容によってはここに何日もいることもありますので。そのうちみんなとも会うでしょうから、その都度ご紹介しますね。大丈夫、みんな気さくな人たちばかりなのですぐ打ち解けると思いますよ」

 ヴェルデの屋敷の人たちは人数が少なく、みんなローラを快く受け入れてくれた。ヴェルデの仕事の関係者ともなれば、気難しい人間もいるのではないかとすこし不安だが、ヴェルデが大丈夫だというのであればきっとそうなのだろう。ローラは不安をかき消すようにヴェルデを見て微笑んだ。

 微笑むローラを見て、ヴェルデはローラの両手をとって優しく微笑み返した。すぐにそれは終わるだろうと思っていたのに、ヴェルデと向かい合い、両手を繋ぎながら見つめ合う状態がなぜか長く続いている。ローラはだんだんと恥ずかしくなってきた。

「あ、あの、そろそろこの手を離していただいても」

「私はもう少しこうしていたいのですが、だめでしょうか?」

 懇願するような顔でヴェルデが聞いてくる。その顔を見てローラは顔に一気に熱が集中するのがわかった。

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