目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
 そう言って、ヴェルデはフェインにローラのことを説明し始めた。ローラは隣国の貴族の令嬢で、長い間呪いの魔法を受けていた。その呪いを解くために隣国に呼ばれ、ローラに出会ったときにヴェルデが一目ぼれをした。呪いを解いたあともローラと交流することでローラの人柄に惹かれ、どうしてもローラを連れて帰りたかったヴェルデは、ローラを口説き落としてサイレーン国へ連れてきた、と。貴族のご令嬢でヴェルデよりも身分が高く、婚約者になってからもまだ敬語が抜けきらないのだ、と。


(本当のことは言えないからと事前にヴェルデ様が作ったシナリオのとおりだわ。ヴェルデ様も出会う人出会う人にこれをわざわざ言わなければいけないのは大変でしょうに……)

 本当のことは言えないが、完全に嘘ではなく近しい部分は多々ある、だから大丈夫だとヴェルデは言っていた。そしてその通り、ヴェルデはすらすらとフェインへ説明している。

「ふうん、ヴェルデの一目ぼれ、ねぇ」

 チラ、と横目でローラを値踏みするようにフェインが視線をよこす。そこには興味以外のなにか、根本的に違う何かが含まれているような気がしてローラは首をかしげた。

「あ、お前もローラ様に一目ぼれしたんじゃないだろうな。絶対にやらないからな」

 そう言ってヴェルデはローラを自分の腕の中に閉じこめた。

(ま、また突然そうやって恥ずかしいことを!)

 ローラが思わず赤面すると、それを見たフェインがはぁ、と静かにため息をついた。


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