目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする

11 距離の詰め方

 ローラがヴェルデと共にサイレーン国へやってきて一ヶ月が経った。

「やはり師匠の魔法が何らかの形で関わっていることには違いないようですね」

 ローラにかけられていた魔法を詳しく解明するため、ヴェルデは仕事場の一室でローラをくまなく調べていた。ローラを調べるためとはいえ、ヴェルデからのスキンシップが日に日に強くなっている気がして、ローラはその度にドキドキしてしまう。

(エルヴィン様とは手も繋いだことがなかったからヴェルデ様にあちこち触られるのはいつまで経っても慣れないわ。魔法の解明のためなのだから、ドキドキする必要もないし、ヴェルデ様だって他意はないってわかっているのに……)

 見た目が異常に美しすぎる目の前の男に、手を握られたり腰に手を回されたり、顔を覗き込まれたりするのは心臓に悪すぎる。早く慣れなければ、とローラは静かにため息をついていた。

「ローラ様、お疲れですか?少し休憩しましょう」

「あっ、いえ、そんなことは……。あの、前にもおっしゃっていましたが、ヴェルデ様のお師匠様の魔法が関わっているというのは、一体どういうことなのでしょうか?」

 まさかエルヴィンに攻撃魔法をかけたのがヴェルデの師匠なのだろうか。だが、そんなことがあればヴェルデがこんなにも落ち着いているわけがない。
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