目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする

12 気持ち

(フェイン様が来て下さってちょうどよかったわ、あのままだと心臓がもたないもの……!)

 給湯室にお茶を淹れに来たローラは、ヴェルデとのあまりの近さに胸がどうにかなりそうだった。そのことを思い出して両手で頬を押さえ、ほうっとため息をつく。そして、部屋に入ってきたフェインの様子を思い出してさらにため息をついた。

(フェイン様は私のことを快く迎えてくれたわけではない気がするわ。ヴェルデ様の婚約者だから渋々、と言ったところかしら。それもそうよね、急に突然見知らぬ女が婚約者です、なんて驚くだろうし)

 ヴェルデの仕事はそのほとんどをフェインが手伝っているらしい。二人の付き合いはかなり昔からのようで、そこに突然ローラが入ったような形だ、あまりいい気はしないのだろう。

(できればもうちょっと仲良くなれると嬉しいのだけれど……慌てても仕方ないわね。とにかく今はお茶を淹れましょう)

 ローラはお湯を沸かしてお茶の葉を選び始めた。選棚にはいろいろなお茶の葉が並んでいる。あまりの多さにどれにしようかと悩んでいると、背後から声がした。

「ヴェルデはアールグレイが一番好きだ」

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