目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
 振り返ると、給湯室の入り口に背中をもたれかけて腕を組んだフェインがいる。

「フェイン様。アールグレイだと……これですね。フェイン様はどれがお好きなんですか?」

 ローラがお茶の葉の入った瓶の一つを取り出しフェインに見せ首を傾げる。

「俺も同じものが好きだ」

「では、アールグレイをお淹れしますね」

 ニコッと微笑むと、ローラはティーポットとカップを手際よく用意して、お湯が沸くのを待った。

「……最近の態度、色々とすまないな。ヴェルデに謝ってこいと言われた」

 突然、フェインがボソッと言葉を発した。どうやらローラに謝罪をしているらしい。その顔はどこか苦々しく、だが嘘はついていないように見える。

「……いえ、私はここに突然やってきた身です。ヴェルデ様のお仕事をフェイン様がずっと今まで支えてきたと聞いていますので、お二人の仲に突然私のような人間が来て、しかもヴェルデ様のお仕事を増やしてしまったような形になって…… きっとフェイン様も色々と思うことがあったのだとわかっています」

 眉を下げて少し寂しげに微笑むローラを、フェインは驚いたように見つめた。

「あんた、お嬢様なくせに随分と優しいんだな。高飛車な感じが全くしないし。まぁ、ヴェルデが見込んだご令嬢なんだから当然といえば当然か」

 はぁ、とため息をついてフェインは給湯室の中へ入り、近くの椅子に座った。それを見てローラも近くの椅子に腰をかける。

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