目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
「……と言うことは、もしかしてヴェルデ様も寿命を延ばすことが?」

 そんなすごい魔術師の弟子であり、百年も眠り続けていたローラを目覚めさせることができたヴェルデだ、きっとできるに違いない。ローラが思わず尋ねると、ヴェルデは静かに笑って言った。

「できますが、今の年齢は延ばしていないそのままの年齢です。まぁ、私もいずれは師匠のように満足するまで研究を、とは思っていましたが……あなたに出会ったので、寿命を延ばす必要は無くなりました」

 どういう意味だろうか?ローラが不思議そうな顔で見つめると、ヴェルデは優しく微笑んで言った。

「あなたがいなくなった世界にいつまでもいたいとは思いません。あなたと共に同じ時間を同じだけ過ごすことができれば、それで十分です」

 ふふ、と嬉しそうに笑うヴェルデを、ローラは信じられないものを見る目で見つめる。

「そんな……満足しないまま途中で研究をやめてしまうおつもりなのですか?せっかく寿命を延ばして心ゆくまで魔法の研究できるのに……私なんかのために、ご自分の夢を諦めてしまうだなんて間違っています!」

 ローラの指からティーカップがはずれ、カシャン、と音がして受け皿にお茶がこぼれ落ちる。思わず大きな声を出してしまい、ローラは自分で驚いてしまったが、それだけヴェルデの言うことに納得できなかったのだ。

「夢を諦めるわけではありませんよ。確かに研究は大好きです。ですが、それよりも大好きで大切なものを見つけてしまったのですから、むしろ新しい夢を手に入れたと思っていただく方がしっくりきます」

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