目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
 なんてことはない、当然だと言うような顔でヴェルデは言う。この人はどうしてそんな風に思えるのだろうかと、ローラは不思議でたまらない。

 自分を目覚めさせてしまったことが、そんなにも責任を感じてしまうことだったのだろうか。知らぬ間にヴェルデを縛り付けてしまっていたのかもしれないと、ローラは苦しくなる。

「そんな……意味がわかりません。どうしてそんなに私を……いくら目覚めさせてしまった責任感とはいえ、あまりにもご自分を犠牲にしすぎています」

 呆然としながら言うローラに、ヴェルデは少しだけ厳しい顔つきになった。

「前にもお伝えしましたが、あなたと共に生きることは私にとって責任感ではありませんし、義務感でもありません。あなたと一緒にいることが、あなたの居場所を造ることが、私が心から望むことなのですよ」

 真剣な目でじっとローラを見つめるヴェルデを、ローラは不安げに見つめ返した。

「そんな、ヴェルデ様がそこまで私を思ってくださる理由が全くわかりません、隣国の、百年も眠り続けていた私のような人間を、なぜ?」

「それは……いずれ分かる時が来ます。とにかく、私があなたと共に生きていきたいと願うのは、私自身からわき上がるものです。ローラ様が思っているようなことではありません。それだけは、ちゃんとわかってほしい」

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