目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
 そう言って、ヴェルデはぐっとローラに近寄り、ローラの頬にそっと手を添える。その距離は今にも唇が触れてしまいそうな距離で、ローラは驚きのあまり目を背けた。心臓はバクバクと高鳴り、顔は火が出てしまいそうなほど熱い。

「ローラ様、目を逸らさないで、私を……俺を見て」

 取り繕うのをやめ、ヴェルデは本来の口調でローラに話しかける。急なギャップにローラの心臓は口から飛び出そうになった。

 すり、と頬に添えられた手が優しく頬を撫でる。その仕草に、ローラは思わず身じろいだ。そんなローラを、ヴェルデは目を細めて見つめると、静かに微笑んだ。

「……なーんて、ね。今日はここまでにしておきましょう。あまりやりすぎるとローラ様に嫌われてしまいますし、それは困る」

 すっと頬から手を離してヴェルデはローラから離れた。ヴェルデの顔を見ると、嬉しそうに笑っている。


「か、揶揄ったのですか?!」

「違いますよ、揶揄ってなどいません。ですが、急すぎるのは嫌でしょう?少しずつ、でも確実に距離を詰めようと思いますので、覚悟していてくださいね」

 爆弾発言をされて、ローラは思わず目眩がする。

(か、覚悟って、今のようなことが、また、起こるということなの?)

 もしそうであれば心臓がもたない。ローラは思わずヴェルデから距離を取ろうとするが、その分ヴェルデは近寄って距離を縮める。

「いずれ俺の本気をちゃんとわからせてあげますから。あなたのことは逃しはしませんよ、絶対に」

 そう言って、ヴェルデは妖艶に微笑んだ。
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