目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする

2 絶望

「百年、眠り続けていた……?」

 眠り姫ローラが目を覚ましてから二週間が経った。
 それまでローラには、詳しいことは何一つ伝えていない。ローラに過度なショックを与えないため、目覚める前のこと、当時の状況を聞かれてもうまい具合にはぐらかし、今日までなんとか持ちこたえてきた。

 ヴェルデの回復魔法のおかげもあり、ローラの体調はぐんぐん回復し、ようやく詳しい話ができる状態にまでなっていた。そして、ついにローラが百年も眠り続けていたことを話したのだ。

「あなたは当時の第一王子であるエルヴィン殿下を庇って魔法をその身に全て受けました。そのせいであなたは今まで百年もの間、ずっと目覚めることなく眠り続けていたのです。長い年月の間、我が国ではあなたを目覚めさせようと何度も試みましたができませんでした。ですが、ようやくこうしてあなたを目覚めさせることができた。それもこれも、サイレーン国の筆頭魔術師、ヴェルデのおかげです」

 サイレーン国という言葉を聞いた瞬間、ローラは明らかに驚愕の眼差しをメイナードに向けた。

「どうして、どうしてサイレーン国の人間がここにいるのです?我が国とサイレーン国は敵対していたはずではありませんか」
「それは、昔の話です。今では同盟を結んで良好な関係を築いていますよ」

 メイナードの話に、ローラは信じられないようなものを見る目でヴェルデを見た。そんなローラを、ヴェルデはやや苦笑して見つめ返す。
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