目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする



 ローラを別室のベッドに運んでから、ヴェルデとクレイはベッドの近くのソファに座り直した。

「先ほどの話、一体どういうことでしょうか」

 ローラへ殺意が向けられており、ローラはその相手をわかっていたのではないかとクレイは言った。そして、ローラはその言葉に動揺し、気を失ったのだ。

「彼女へ殺意を向けていたのは、恐らくだが当時の第一王子、ローラ様の婚約者であるエルヴィン殿下だ」

「は?」

 クレイの話にヴェルデは信じられず、思わず声を上げる。

「エルヴィン殿下はローラ様が亡くなった後、当分妃は取らないと言ったと聞いています。それだけローラ様を愛し、ローラ様を失ったことを悲しんでいたのではないのですか?!」

 ヴェルデがそう言うと、クレイは床を見つめて静かにため息をついた。

「それはあくまでもそう言い伝えられているだけだろう。現在では当時のことなど誰も知らない。王家が自分たちの都合の良いように話をすり替えただけだ。実際は、ローラ様が亡くなってすぐに新しい妃がエルヴィン殿下と結婚し子供を産んでいる」

「まさか……」

「あぁ、エルヴィン殿下はローラ様意外の女性と体を重ねて、既に身籠らせていた。ローラ様を快く思わない王家の一部の人間がエルヴィン殿下へその女性を紹介し、その女性も第一王子の正妃となるために頑張ったのだろうな。まぁ、色気じかけをするまでもなくエルヴィン殿下は簡単にその女性に手をつけたわけだが」

 ヴェルデは信じられないというような顔でクレイを見るが、クレイは感情の籠らない目でヴェルデを見つめ返す。

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