目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
「どうして……こんなにも素直で純粋なローラ様が、好かれこそすれ、なぜ王家の一部の人間に快く思われないのですか?それにエルヴィン殿下だってどうしてローラ様を裏切るような真似を……」

「『素直で純粋だから』だろう。正しいことを正しいと素直に言えてしまうローラ様は、王家のような俗物にまみれた世界ではむしろ邪魔だと思う人間の方が多いだろう。そしてエルヴィン殿下にとってもそうだったのだろうな。そして、聡明なローラ様のことだ、エルヴィン殿下の気持ちに気づかないわけがない」

「そんな……」


 ヴェルデは静かに眠るローラの顔を見る。この国に来てから、ローラは徐々に笑顔を取り戻していた。ティアール国にいた頃のように塞ぎ込んだり突然いなくなることもなくなり、いつも笑顔だったのだ。そんなローラを見て、自分はローラに居場所を作ることができたと思い込んでいた。

 だが、眠り続ける前に自分に殺意が向けられていたことを知っていただなんて。だとしたら、一体、どんな気持ちで今まで笑っていたのだろう。本当に、心の底から笑えていたのだろうか。

「私はローラ様のためを思ってローラ様へ守りの魔法をかけた。だが、むしろ余計なお世話だったのかもしれない」

「それは、どういう意味ですか」

 ヴェルデがクレイに詳しく聞こうとしたその時、ベッドから小さなうめき声が聞こえた。



< 62 / 112 >

この作品をシェア

pagetop