目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
 ご令嬢がキャッキャッと嬉しそうにはしゃいでいるのがわかる。

「あの女は俺に危険が及べば自分の身を差し出してでも俺を守るだろう。第一王子の婚約者として絵に書いたようなできた女だからな。俺をかばって死んだとなれば、死の原因を誰も怪しむことはないだろう」

 話の内容を聞いて、ローラはその場に崩れ落ちそうになる。だが必死に堪え、なんとかその場から離れ自室に戻った。

 エルヴィンから発せられた言葉は、つまり、自分を殺すということだ。婚約破棄されるならまだしも、殺されるほど嫌われていただなんて思ってもいなかった。

 ぽろ、とローラの目から涙がこぼれる。自分は、そこまで必要のない人間だったのだ。家族にこの話を言ったところで、第一王子が相手だ、何もできないだろう。

 ほとぼりが済むまでどこか田舎で静かに暮らせと言われるかもしれない。それは死んだように生きろと言われるようなものだ。それに、ほとぼりが済んだらまた別の誰かの婚約者にさせられるのだろう。

 その相手に気に入られなかったら?自分はまた、居場所がないことを突きつけられるだけだ。

「どこにいても、私は私でいられないのだわ……」



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