目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
「泣いて、いたのですね」

 ヴェルデにそう言われた瞬間、またローラの両目から涙がこぼれ落ちてきた。どうしてだろうか、ローラは戸惑うが涙は止まってはくれない。

 必死に両手で涙を拭っていると、フワッとヴェルデの両腕がローラを抱き締める。

「ローラ様、お辛いのでしたらもっと泣いてください。全部俺が受け止めます。どんなことでも受け止めますから、抑え込まないでください」

 ヴェルデの言葉にローラは大丈夫だと答えようとしたが、できなかった。ローラの両目からはどんどんと涙が溢れ、嗚咽が漏れ出る。

 ローラがどんなに抑えようとしても、自分の中から絶望や悲しみが溢れ出し、止まらないのだ。ただただ泣き叫ぶローラを、力強く、でも壊れないように、ヴェルデは必死に抱きしめた。

「あなたの悲しみに寄り添えていると思っていました。あなたに居場所を作ってあげられたと勘違いしていました。でも、あなたはもっともっと深い悲しみを抱えていたのですね。俺はそれに気づくことができなかった。もっと早く気づくことができていたら……」

 ぎゅっとヴェルデがローラを抱き締めると、ローラはさらに泣きじゃくり始めた。
< 66 / 112 >

この作品をシェア

pagetop