目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
「ヴェルデ、様は、何も、悪く、ない、です……こんな、私に、居場所を、作って、くださったのに、私は、私は」

 ヴェルデの腕の中で必死に言葉を紡ごうとするが、嗚咽が混じってうまく喋ることができない。そしてそのままローラはひたすらヴェルデの腕の中で泣いていた。




 どのくらい泣いていただろうか。少しずつローラは落ち着きを取り戻し、涙もようやく止まった。

「すみません。もう大丈夫です。ありがとうございました」

「本当に大丈夫ですか?」

 そっとヴェルデの体から離れると、ヴェルデは心配そうにローラを覗き込んだ。ヴェルデの問いに、ローラは微笑んで頷く。

「たくさん泣いたら、スッキリしました。いつかの時と同じですね、ヴェルデ様には救われてばかりです。……クレイ様から、詳しいお話は聞いたのでしょう?」

「……はい」

「実は、あの日、エルヴィン様をかばったあの時、私はようやく死ねると思っていたのです」

 ローラの言葉に、ヴェルデは両目を見開いてローラを見つめる。驚くヴェルデに、ローラは優しく微笑んで話し始めた。

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