目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする

19 洞窟

 クレイに泊っていけと言われたヴェルデとローラは、気分転換をかねて夜になるまでの時間、クレイの屋敷の周辺を馬で散策することにした。

「屋敷にいてもすることがありませんし、せっかくですから外の空気を吸いに行きましょう。気分もきっと晴れますよ」

 ローラも一応乗馬ができるのだが、ヴェルデは一頭に二人で乗って行くと言い張った。ヴェルデに後ろから包まれるようにして馬に乗っているローラは、初めてのことでどうしていいかわからない。しかもヴェルデとの距離があまりにも近すぎて心臓が飛び出てしまいそうだ。

(こ、こんなに密着するなんて思わなかった!ヴェルデ様が話をするたびに良い声が耳の近くで響いて……どうしていいかわからないわ。きっと顔も真っ赤になってる……ヴェルデ様にこの顔を見られてしまわないことだけが救いね)

「ローラ様、緊張していますか?大丈夫です。絶対に落としたりしませんから安心してくださいね」

 そう言ってヴェルデは後ろから片手をローラのお腹にそっと回す。

(あああああ、緊張してるといっても、馬から落ちることを心配しているわけじゃないのに!どうしましょう、ヴェルデ様の腕が、お腹に……)

 あまりの恥ずかしさにローラがうつむいていると、ヴェルデはローラの顔を横から少しだけ覗き込む。そしてローラの様子を見て満足そうに微笑んだ。

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