目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする

23 手紙

「百年も眠っていた!?」

 クレイの屋敷から戻ったローラとヴェルデは、仕事場に来ていたフェインにローラの過去について説明をしていた。ローラがヴェルデの元に来た当初は誰にも話さないつもりだったが、ヴェルデと昔からの仲であるフェインになら話しても問題ないだろうということになったのだ。

「突拍子もなさすぎて、信じていただけないかもしれませんが」

 控えめに、苦笑しながら言うローラを見て、フェインは真剣な顔になった。

「……いや、信じるよ。ヴェルデが連れてきた時点で何かあるんだろうとは思っていたし、クレイ様が関わっていたならなおさらだ。それにあんたもヴェルデも嘘をつくような人間じゃないからな。それにしても、いいのか?俺にそんな大事なことを打ち明けて。本当は秘密にするつもりだったんだろ」

「いいんです。ヴェルデ様と古くからの付き合いであるフェイン様は信頼のおける方ですし、フェイン様には知っていてほしいと思ったので」

 ふわっと優しく微笑んで言うローラを見て、フェインは一瞬固まり、思わず顔を赤らめて照れてしまう。それを見たヴェルデは少しだけムッとしたが、そんな自分に気づいてすぐに苦笑した。

「俺も、フェインには知っていてほしいと思ったんだ。……それにしてもフェインにまで焼きもちをやくなんて俺もどうかしてるな」

「?どうかしたか」

 小声すぎて聞こえなかった最後の言葉にフェインが首をかしげると、ヴェルデは何でもないよと笑った。





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