目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする




 クレイの屋敷から帰ってきて三日後。王城から手紙が届いた。

「来週、ティアール国から来賓を招いて懇親会を開くそうです。それに、俺とローラ様も出席してほしいと書いてあります」

「私も、ですか?」

 サイレーン国の筆頭魔術師であるヴェルデが呼ばれるのはわかる。だが、そもそもティアール国を抜け出しヴェルデとサイレーン国にやってきたローラまで呼ばれるのは不思議だ。

「俺の婚約者として参加してほしいそうです。俺も、今までこういう席に一人で参加しているといろいろと面倒だったので、婚約者として一緒に来ていただけるとありがたいことではあります。……ですが、ローラ様は大丈夫ですか?」

 国として招くのであれば、訪れるのは恐らくティアール国の第一王子であるメイナードとその側近たち、メイナードが来れない場合は第二王子とその側近たちあたりだろう。とにかく王家の人間がやって来るのは間違いない。その場合、ローラの素性を知っている人間が来るはずだ。メイナードであれば事情を知っているので問題ない。だが、違う人間の場合、何かしらやっかいなことが起こりそうな予感がする。ヴェルデとしてはローラを連れて行くのは心配だ。

 それにローラとしても不安が大きい。メイナードの側妃となることを拒み、ヴェルデの婚約者としてサイレーン国へやってきたのだ。ティアール国を捨てた人間だと思われてもおかしくない。どうしたものかと悩んでいると、ヴェルデが手紙の続きを黙って読みながら静かにため息をついた。

< 87 / 112 >

この作品をシェア

pagetop