目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする

25 攫われた姫

「ローラ様、……ローラ様!」

 ヴェルデは周辺をくまなく見るが、ローラの姿はどこにもない。視界にはティアール国の第二王子、アンドレの姿が入るが、そこにもローラの姿はなかった。むしろ、アンドレも会場内が一時的に暗闇に包まれたことに驚いている様子だ。

(一体どういうことだ……第二王子は、囮か?目をくらますためにあえて第二王子をここへ連れてきた?)

 アンドレの元へ話を聞きに行ったメイナードが戻って来る。

「ローラ様のことは何も知らないそうだ。……敵に謀はかられたられたようだな」

 メイナードの言葉に、ヴェルデは血がにじみ出そうなほどの力で拳を握り締めた。








(ハッ、ここは……?)


 突然会場内が真っ暗になり、ローラは次の瞬間には見知らぬ場所にいた。どうやら庭園のようだ。

「気が付いたようですね」

 背後から声がして思わず肩が震える。振り向くと、そこには見知らぬ男性が立っていた。銀色の短髪にモスグリーンの瞳。背が高く、一見細身だが、体つきはしっかりしてる。三十代後半から四十代前半といったところだろうか。みたところ、騎士のような姿をしている。

「あなたは……?それに、ここは?」

「はじめまして、ローラ様。私はティアール国のオーレアン公爵家のベリックと申します。ここは、王城のはずれにある庭園のひとつです。王城には庭園がいくつかありますが、ここの庭園はあまり人がこない」


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