目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする
 なぜティアール国の公爵がこんな人気のない場所にローラと二人きりでいるのか。さきほどまでのメイナードたちの話を思い出してローラは身をこわばらせた。

「どういうおつもりですか?……アンドレ殿下はどちらに」

「あぁ、アンドレ様の差し金だと?ははは、まんまとこちらの企てにのってくださったわけだ。アンドレ様は関係ありませんよ。彼はただの目くらましです、何も知りません」

 ベリックはさも面白いという顔であざけわらう。自国の第二王子を使うなどと大それたことを平気で行うこの男は、一体なんなのだろうか、あまりにも不気味でローラは寒気がする。

「あなたには私と一緒に我が国に戻ってきていただきたいのです。あなたをみすみすサイレーン国へ渡したメイナード殿下はおろかだと思いますよ。あなたを百年の眠りから目覚めた聖女としてあがめ、信仰心の強い人々の心を掌握すればいいものを」

 ティアール国の一部の人間は信仰心が強い。昔ほどではないが教会の力は強く、政治に口を出すことも多いのだ。

「サイレーン国などにいてもあなたの良さは発揮できないでしょう。あなたのような美しく聡明な女性が聖女として存在することで平和ボケしきった国も立て直すことができる。 それに、どうせあの筆頭魔術師とも白い結婚なのでしょう。サイレーン国にいてもあの男の足手まといになるだけだ。あなたは魔法に特別秀でているわけでもない。あなたがあの男の側にいたところで何になる?私と一緒に国に戻った方があなたの居場所はありますよ」

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