アイドル様は天然キラー

朝食を食べ終えて片付けをしている時、ピンポーンとチャイムがなった。



急いで玄関を開けると、そこには帽子とサングラス、マスクをした男の人が2人たっていた。



「・・・・・・どちら様で・・・?」



「“さっき電話したヤツ”って言えば、わかってもらえるか?出来れば、中に入れて貰えると助かるんだが」



「さっき──・・・!!あっ・・・中へどうぞ・・・!NAKI呼んできます・・・!」



私がさっき電話した相手は、バイオレットフィズのRAIしかいない。



それに気付いた私は、大きな声を出さないようにしながら家の中へ招き入れる。



近くには人気(ひとけ)はないけど、バイオレットフィズのメンバーが一般人の家に入っていくところなんて撮られたりしたら大変だもんな。



まぁ、変装した状態で中に入っても“強盗・・・?”ってなるかもしれないけど。



「あれ?なんで2人も中に入ってきたの?迎えに来ただけじゃないの?」



リビングへと2人を連れていくと、準備の終えたNAKIが歯磨きをしながら目をぱちくりさせていた。



その気持ちはとてもわかる。



だって、私の家にバイオレットフィズのメンバーが勢揃いしてるんだもん。



卒倒してしまうわって話よ。



「お前がこの子にメーワクかけたから謝罪しに来たんだよこの天然坊や!」



「痛っ・・・殴ることないじゃん」



変装を取ったRAIが、歯磨きをしていたNAKIに向かってゲンコツをする。



殴られた頭を押さえて少し涙目になりながら、RAIに上目遣いをするNAKI。



あぁ・・・殴られて痛がってるNAKI可愛い・・・!!



このやり取りを生で見れるとか、どんなに善行積んでも無理なのにそれが叶っちゃったよ!!



口元を押さえながら、叫び声をあげないように何とかこらえる。



すると、サングラスとマスクを取ったKAZUが私の近くへと寄って来た。



「ねぇ、君」



「はい、なんでしょう?」



「どさくさに紛れてNAKIの写真、撮ってないよね」



いつものKAZUとは違う、冷ややかな目・・・だけど、それもそれで格好良さが際立っていいかもしれない。



それだけNAKIのことを考えて慎重に行動してくれてるってことだもんね。



「撮ってませんよ。確認してください」



そう言ってスマホをKAZUに差し出す。



それを見て、驚いたような顔をしているKAZUはスマホを受け取ろうとしなかった。



「・・・だから言ったじゃん。大丈夫だって」



一連の流れを見ていたNAKIは、KAZUに向かって言葉を紡ぐ。



写真を撮ってたらNAKIが1番に気付くだろうからね。



まぁ、そんなことはしませんが。



「・・・そうだな、疑って悪かった」



「いえ。当たり前のことなので気にしてませんよ」



NAKIの言葉で、素直に引き下がるKAZU。



そんな彼に微笑みながらスマホをポケットにしまった。



「何から何までごめんな?それから、NAKIを泊めてくれてありがとう。このことは秘密にしてもらえるかな?」



「もちろんです。むしろ、他に漏洩しないように徹底させてください。それがバレてNAKIが炎上、とか死んでも嫌なので」



一部始終を無言のまま聞いていたRAIは、眉尻を下げながらお願いしてくる。



それに対して、むしろ望むところだと言わんばかりの返答をした。



こんなくだらない事でNAKIの活動を妨げることはしたくないもん。



「話がわかる子で助かるよ。NAKI、そろそろ行くぞ」



「わかった」



RAIの言葉で変装をして玄関へと向かうNAKI。



3人が玄関で靴を履き、警戒しながら外へと出る。



「それじゃ、俺達は行くな」



「・・・邪魔したな」




「凛、行ってきます」



それぞれが何かを言い残し、去っていく。



だけど、NAKIだけ戻ってくるかのような言い草をしていた。



まぁ、気のせいか・・・。



そう思いながら、3人を見送ってから学校へと向かった。


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