アイドル様は天然キラー
第2章 居候のアイドル
授業も終わり、放課後──
今日はバイトが休みだからゆっくりできそうだ。
あと少しで家に着く・・・そんな時、後ろから見られているような感覚に陥る。
後ろを振り向くと、帽子を深く被ってサングラスとマスクをした人が私の後をつけていた。
なんだろう、このデジャブ感・・・。
「・・・なにしてるんですか?」
その場に立ち止まり、後ろを振り返って付けてきている人──もとい、NAKIに声をかける。
すると、ビクッと体を震わせた後に周囲を見回してから私に近付いてきた。
「凛、あのね・・・しばらく泊めて欲しいんだ」
「・・・出ていく時に“行ってきます”って言った時点でおかしいとは思ってました・・・」
手で顔を覆いながらため息をつく。
気のせいかと思ってたけど、やっぱり気のせいじゃなかったみたい。
「さすがにそれはやばいんじゃないですか?マスコミとか・・・」
「・・・だめ?」
「ダメじゃないです!!」
サングラスを外して首を傾げながら上目遣いでお願いしてくるNAKIに食い気味に即答する。
そのお願いの仕方はズルいってぇ〜・・・!!
「ふふっ、ありがとう」
嬉しそうにしながら、サングラスをかけ直すNAKI。
あの顔をすればお願いが通ると思ってやがる・・・ズルいって・・・!!
「じ、じゃあ・・・どうぞ」
「うん、ただいま」
玄関を開けてNAKIを招き入れると、我が家に帰ってきたかのようにただいまと言って入っていった。
私は誰にも見られていないことを確認して玄関の扉を閉める。
NAKI、普通に入ってきたけど自分が人気グループに属してるってわかってるのかな?
そんなことを考えている私のことなんか我関せずに部屋の中に入っていくNAKI。
マイペースなところも可愛いと思ってしまう私はどうやら重症みたいだ。
仕方ない、服を着替えて課題をやろう。
そう考えた私は、自分の部屋へ行き制服から部屋着へと着替える。
そして、課題を持ってリビングへと向かう。
本当は部屋でやろうかと思ったけど、部屋には漫画本やら推しのグッズやら誘惑がいっぱいあって集中出来ないからね。
そう思ってリビングへ行くと、既にNAKIがソファーに座って課題を広げていた。
おう・・・先客がいたか・・・。
仕方ない、台所の近くにあるテーブルでやるか。
そう思ってテーブルの方へと向かうと、NAKIが不思議そうに私の方を見た。
「そっちでやるの?こっち来てやろうよ」
「ヒッ・・・!?い、いや、でも・・・!!」
「ね?来て?」
「ハイッ!!」
可愛らしく首を傾げて自分の隣をポンポンと叩くNAKIに対して、大声で返事をしてNAKIの隣へと座る。
ヒェ〜・・・推しの隣に座っちゃった・・・!!
過激派に殺される・・・!!
そんなことを考えながら課題を広げた。
「ねぇ、凛って3年生?」
私の課題を見つめていたNAKIは、唐突に口を開いた。
「え?あ、ハイ。そうですけど・・・」
「俺より先輩なんだ。じゃあ、コレ教えて」
そう言ってわからない問題を指差した。
うわ、懐かしい問題・・・!
NAKIは私より1個下だってわかってはいたけど、この問題を見ると改めて実感するなぁ〜。
「えっとね・・・あぁ、これはこの公式をあてはめていけばすぐ解けるよ。今使ったのはこっちの問題で使うやつだね」
「ありがとう、先輩」
「ふぐぅ・・・!!」
NAKIの発した先輩という響きに、尊さのあまり胸を抑えてソファーにうずくまる。
な、なんて破壊力・・・!!可愛くてしんどい・・・!!
「・・・どうしたの?」
「な、なんでもない・・・でも、先輩はやめて・・・尊死する・・・」
「?わかった」
よくわかっていない様子のNAKIだったけど、先輩呼びはやめてくれるようだ。
それに、こんなことしてる場合じゃない・・・課題を終わらせなきゃ・・・。
そう考えた私は、体を起こして課題に向き合った。