アイドル様は天然キラー
考え事をしながら着替えを済ませてリビングで彼女さんのことを待っていると、チャイムが鳴り響く。
NAKIがお出迎えに行ってくれたみたいで、お邪魔します、という声が聞こえる。
なんだろ・・・ちょっと声が低いような・・・?
「凛、連れてきたよ」
「お邪魔します」
そう言ってNAKIが招き入れたのは、NAKIよりも身長の高い男の人だった。
私の頭で想像していた“ミサキさん”の姿がボロボロと崩れ去っていく。
「おっ、男!?」
名前からして女の人を想像していたけど、男の人だったという衝撃から思わず口に出してしまう。
女の人じゃなく、男の人だったなんてっ・・・!!
ま、まさか、NAKIってそういう・・・!
「だっ、大丈夫!!私、NAKIがどんな人とお付き合いしていても推し続けるからっ・・・!!」
「違います」
混乱しながら紡いだ言葉は、NAKIの隣にいる男の人に淡々と否定された。
え、ち、違うの・・・?
だって、NAKIの激レアなメガネ姿知ってるんだから、親密な関係とかじゃないの?
「えっ、違う?」
「ゴホン・・・あいさつが遅くなりました。私、バイオレットフィズのメンバーのマネージャーをやらせて頂いております、三咲 颯太と申します」
咳払いをしたあと、胸ポケットから名刺を出して私に両手で差し出してくる。
そこには、バイオレットフィズ専属マネージャー、三咲 颯太と書かれている。
「あっ・・・マネージャー・・・」
差し出された名刺を両手で受け取り、呆然と見つめる。
だからNAKIの口からちょくちょく名前が出てたのね・・・納得。
「どうしてそのような勘違いをされたのかさっする所ではありますが・・・まぁ、いいでしょう。うちのNAKIがお世話になってるのにごあいさつが遅くなり申し訳ありません」
「あっ・・・いえ、そんな・・・!!頭をあげてください・・・!!お仕事も忙しいでしょうし、仕方ありませんって。気にしないでください」
深々と頭を下げる三咲さんに対して、とんでもないと言わんばかりに両手を体の前で振る。
遅くなった、と言っても私がNAKIを家に泊めてからたった2日しか経っていない。
むしろ早い方だろう。