アイドル様は天然キラー

応募から1ヶ月──無事に当たった私はライブ会場に来ていた。



販売ブースで今回のグッズを買い込んだあと、会場入りしてペンライトの電池を替える。



その後、この前作った“バンして”と書かれたうちわを取り出したりしてライブに向けての準備をする。



それにしても、当たってよかった〜・・・!!



番号見ただけじゃわからなかったけど、かなりの良席だったし。



こりゃ一生分の運使ったわ。



ライブが始まるまでの時間をそんなことを考えて過ごしていると、開演時間になった。



会場が薄暗くなり、音楽が流れ始める。



すると、しばらくしてバイオレットフィズのメンバーがステージ上に現れた。



「あ゙っ・・・!!NAKI〜!!」



割れんばかりの歓声が上がる中、私もテンションが上がって手にしたうちわを振りながらNAKIの名前を呼ぶ。



ライブ会場で見るNAKIは、家で見るホワホワした雰囲気の奈央樹くんとは違って、凛としていた。



カッコいい中に可愛さもあって頭がぐちゃぐちゃになりそうだ。



ライブが進んでいき、フリートークという名のファンサの時間が来た。



まぁ、この時間はNAKIは他のメンバーの様子を見てるだけなんだけど・・・。



そう考えている時、NAKIが舞台ギリギリのところにたってしゃがみ込んだ。



え・・・NAKI、なにしてるの?



しゃがみこんでいるNAKIを呆然と見ていると、私の持ったうちわを読んでいるようにも見えた。



「・・・バーン」



かと思ったら、私の方に向かって指で銃を作って撃ち抜いてくる。



「・・・え?」



い、今・・・NAKIが私のうちわ見てファンサした・・・?



あの、ファンサをしないで有名なNAKIが・・・?



NAKIのことを見つめながらそんなことを考えている中、会場中に割れんばかりの悲鳴が轟く。



呆然として叫ぶことさえできない私に対して微笑みながら立ち上がったNAKI。



その行動であたりは騒然とする。



周囲を確認してみるけど、“バンして”といううちわを持ってる人は居ない。



つまり、私のうちわを見てファンサをしたということになる。



か、確定ファンサだ・・・!!!!



思考停止していた状態からでも導き出せた答えに、アワアワと慌て始める。



あのNAKIから、確定ファンサをっ・・・!?



そんな大混乱の中、ライブは終了した。



その後、どうやって帰ったのかはファンサを貰ったという衝撃のせいで覚えていない。



< 23 / 39 >

この作品をシェア

pagetop