アイドル様は天然キラー
西園寺 奈央樹side



仕事と学校を終えて帰ろうとした時、天気予報の通り土砂降りになっていた。



折りたたみの傘は一応持ってきてはいるけど、この雨は凌げるかわからない。



そんなことを考えながら傘をさして歩いていると、路地裏から猫の鳴き声が聞こえてくる。



その方を向くとそこにはダンボールに入った子猫が2匹、雨に濡れながら必死に鳴いていた。



俺は一瞬拾って帰ろうかとも思ったけど、さすがに居候の身。



凛に確認しないとさすがに無理だろう。



そう考えた俺は、これ以上濡れないように傘を開いたまま置き、子猫が濡れないようにした。



「拾ってあげられなくてごめんね」



濡れた体の子猫達を軽く撫でたあと、走って凛の家へと走る。



だけど、雨の強さは増すばかりで家に着く頃にはびしょ濡れになってしまった。



家に帰ってびしょ濡れになった服のボタンを外しながらお風呂場の扉を開けると、そこには凛がお風呂の掃除をしていた。



俺の事を見た途端、アワアワと慌て出して頭を拭いたりしてくれる凛。



その姿を見ていたら、胸の奥がキュゥ・・・と締め付けられるような感覚に陥る。



雨に濡れたし、風邪でも引くのかな?



無理言ってお風呂に浸かったあと、寒気が止まらなかったけど、凛がホットミルクを出してくれた。



色んなことに気付いてくれて、優しくしてくれる。



それに、俺が見つけた子猫2匹も飼っても良いとさえ言ってくれた。



やっぱり、推しだから優しくしてくれるのかな?



そう考えた時、理由はわからないけど少しだけ胸がモヤッとした気がした。



そのまま配信の時間になったんだけど・・・配信中、凛のコメントを見つけた。



内容は、好きな食べ物の話だった。



凛のことだから、俺がトリュフが好きなことぐらいわかってそうだけど・・・。



そう思いながら、トリュフと野菜炒め、卵マヨトーストと答える。



リスナーの皆が卵マヨトーストのことを知らなかったみたいで説明をしている時、下の階から叫び声が聞こえてきた。



凛、気付いたのかな?俺が好きな食べ物、凛が作ってくれたものだって。



そう考えたら面白さが込み上げてきて思わず笑ってしまった。



最近気付いたんだけど、綺麗な顔つきで名前の通り凛としているのに、俺の事に関することになると叫んだり慌てだしたりするのが可愛いと思ってる自分がいる。



だからこそ、ちょっとだけ意地悪したくなってちょっかいをかけることが増えてきた。



それに、リスナーからも最近雰囲気が変わったと言われる。



雰囲気が変わったのは多分──凛に会ったから。



三咲さんからも良い変化だと言われたし、良いことなんだろう。



この先も、凛と一緒にいたいな。

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