アイドル様は天然キラー
NAKI・・・今なんて言った・・・?
泊めて欲しい・・・?
何それ、なんかのテレビの企画?
だけど、それならテレビスタッフの姿がないのは変だぞ・・・?
「あの・・・どういう・・・?」
「今日、泊まるところなくてさ。お願いできないかなーと思って。それで声かけるタイミング見計らってたんだ」
その言葉を聞いて、私は悩んだ。
推しが困ってるなら泊めてあげたい。
だけど、推しと同じ空間にいるという贅沢な経験をしてもいいのだろうか、という葛藤が生まれる。
それに、これがバレたら私は過激ファンに刺されかねないぞ。
「お願い。・・・だめ?」
「ハイッ!!喜んでぇ!!」
コテン、と首を傾げながら私のことを見つめるNAKIに対して、大声で即答してしまう私。
気付いた時には、もう返事をしてしまった後だった。
「ありがと。君の名前は?」
「ふぐぅっ・・・!!あ、小豆沢 凛ですぅ・・・!!」
私の言葉を聞いて少し驚いたような表情を浮かべた後に、フワッとやわらかく微笑むNAKI。
いつもライブやYouTubeの配信で見せているものとは違う笑い方に、感情がグチャグチャにされる。
「俺、西園寺 奈央樹。よろしくね」
「じ、じゃあ・・・家の中へどうぞ・・・」
「うん。お邪魔するね」
OKを出してしまった手前、招かない訳にはいかない。
覚悟をした私は、変装を直したNAKIを家の中へと招き入れた。
リビングに案内し、NAKIがソファーに腰掛けている時、私はリビングの隅で壁に頭をくっつけて状況の整理をしていた。
私の両親は海外出張中で留守にしている。
兄もアパートを借りているから基本的に家に帰っては来ない。
私の家にNAKIと私、2人きりということになる。
それは、推しと2人っきりって訳で・・・。
・・・え?私殺されない?
こんなのバレたら過激派ファンに刺されて殺されない!?
「刺される・・・絶対刺される・・・」
ぐぅーっ・・・
動揺のあまり、ブツブツと壁に向かって呟いていると後ろからお腹が鳴る音が聞こえてきた。
振り返ると、恥ずかしそうにしながらお腹を押えるNAKIと目が合う。
「・・・昨日から何も食べてなくて・・・お腹すいちゃった・・・」
「今すぐご飯作ります!!」
NAKIからお腹空いたという言葉を聞いた途端、キッチンに走っていってご飯を猛スピードで作る。
有り合わせのもので作るからあまり凝ったものは作れないけど・・・野菜炒めなら作れそうかな?
あとは朝に作ってた味噌汁を温め直して・・・ご飯も冷凍して保存していたものを解凍して・・・と。
手際よく準備をして、2人分のご飯を作ってテーブルに置いた。
「ご飯出来ましたよ」
「え?食べていいの?」
「はい、こんなもので良ければですけど」
ソファーに座っていたNAKIに声をかけると、キッチン近くにあるテーブルへ来て腰掛ける。
そして、私の用意したご飯を食べ始めた。
「・・・美味しい・・・!」
野菜炒めを1口食べて、幸せそうに口元を緩めて次から次へと食べ始めるNAKI。
私なんかが作った料理を・・・NAKIが・・・推しが食べている・・・!?
その事が信じられなくて、ご飯を食べながら悶えていた。
「・・・美味しい・・・」
パクパクと食べながら呟くNAKI。
あれだけ人気者でも、生活が大変なんだな・・・。
そんなことを考えながら、ご飯を食べ終えた。