アイドル様は天然キラー
ご飯を食べ終わり、後片付けをするために使った食器をシンクに運ぶ。
その後、洗剤のついたスポンジを持って食器を洗おうとした時──
「凛、俺も手伝うよ」
後ろから近付いてきたNAKIが、私の隣に並び立って泡のついた食器を手に取った。
私の家のキッチンにあるシンクは狭いから、必然的に超至近距離になってしまう。
「ヒギャァァッ!?」
少しでも動いたら触れてしまうほど近い距離に推しがいる。
それに気付いた途端、叫び声を上げながら壁際まで距離をとる。
ドンッと壁にぶつかりながらNAKIのことを見つめた。
あのNAKIが・・・私の近くに来て皿洗いをしてる!?
しかも、私のこと名前呼び!?
そんなことされたら全世界のオタクに殺されちゃうって!!
ていうか近過ぎ!!距離感バグってんのか!?
「・・・ひぎゃあ?」
私の行動に首を傾げながら不思議そうにしているNAKIは、泡のついた食器を洗い流そうと水道に手をかける。
それを見て思わずNAKIに近寄り食器を奪い取った。
「あ、あの・・・!!私がやりますのでソファーでくつろいでてください!!」
「?でも──」
「いいから!!くつろいでてください!!」
手は汚れているから、肘で背中を押しながらリビングにNAKIを連れていき、ソファーに座らせる。
されるがままになっていたNAKIは、座ったまま私のことを見上げた。
「・・・そう?ありがとう」
「ふぁっ!?・・・いいえ!!どういたしまして!!」
フワッと微笑むNAKIの表情を見て、尊さが爆発する。
あのクールビューティーなNAKIが・・・笑った・・・!?
後光が差してる!!ブラボー!!
そんなことを考えながらも、なんとか理性を保ってキッチンに戻り食器を洗い始めた。
生の推しってこんなに破壊力あるのか・・・やばいな・・・。
それに、いつものクールなNAKIとは違って、ちょっとフワフワしてない?
なんか、言葉の端々が優しいっていうか・・・口調が穏やかというか。
それに、普段の配信とかライブとかだと無表情なことが多かったのに、ご飯食べてる時とかお礼言う時とか結構表情豊かだし。
「・・・推しの意外な一面を知ってしまった・・・」
そんなことを口にしながら、泡のついた食器を洗い流してカゴへと片付けた。