アイドル様は天然キラー
小豆沢 凛side



ホワイトデーが過ぎ、バイト先のドタバタが落ち着いた頃、リビングでくつろいでいた。



だけど、隣にいる奈央樹くんは少しソワソワしているように見える。



「ねぇ、凛」



「なに?」



ソファーに座りながら、体を私の方に向けて私の名を呼ぶ奈央樹くん。



テレビに向けていた視線を奈央樹くんに向けると、どこか真剣な顔をしていた。



「好きだよ」



「ふぐっ・・・!!き、強烈なファンサだね・・・、ありがとう・・・。でも、心臓持たないからファンサする時は事前に言っておくれ・・・」



奈央樹くんから告げられたのは好きという言葉で、あまりの衝撃に心臓を押さえながらなんとか言葉を紡ぐ。



最近奈央樹くんの行動に慣れたとは言っても、こういうのは刺激が強い。



「──ファンサじゃないよ」



「え──」



「ファンサじゃない。君のことが好きなんだ、凛」



いつになく真剣な表情──それが、本気であると瞬時にわかった。



だけど、なんで・・・!?



なんで私なんかを・・・!?



「・・・エイプリルフール・・・?」



「今は4月じゃないよ」



可能性のあることを口にするけど、今は4月じゃない。



それはわかってる、奈央樹くんが本気なんだって。



だけど、私の頭では理解できなかった。



「え・・・じゃあ、どうして・・・?私、好かれるようなことしてないよ?奇声しかあげてないし・・・」



「俺もわからない。いつの間にか好きになってたから。・・・でも、多分・・・凛の優しい所とか、その奇声あげちゃう所が好きなんだ」



「・・・・・・え、えっ・・・!?」



奈央樹くんの言葉を聞いても、訳が分からなくて混乱する。



推しに好意を向けられるなんて経験したことないから、どうしたってこうなる。



「凛は、俺のこと好きでしょ?」



「たっ、確かにNAKIの事は好きだよ!?大好き!!だけど、それとこれとは違うって言うか・・・!!推しとして好きだけど、恋愛感情じゃないって言うかっ・・・!! 」



奈央樹くんが私の方に近付きながら聞いてくる。



それに対して、後ろにさがりながら両手を胸の前に出して距離を取ろうとした。



だけど、奈央樹くんは出した手を掴み、自分の方に引き寄せる。



強制的に奈央樹くんの近くへと引き寄せられ、逃げられなくなってしまった。



「じゃあ、アイドルのNAKIじゃなくてただの奈央樹として俺を見て。1人の男として」



「っ・・・」



近い距離で穴が開くんじゃないかと思うほど見つめられ、挙動がおかしくなる。



ただの奈央樹として見てって言われても、NAKIはNAKIだし・・・!!



「だから、まだ返事はしないで。・・・俺を、ただの奈央樹として見てから、返事してくれる?」



「・・・は、はい・・・」



私の両手を握り、真っ直ぐ目を見て想いを伝える奈央樹くん。



なんとか返事を返すと、奈央樹くんは嬉しそうに微笑んだ。


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