アイドル様は天然キラー
奈央樹くんから告白されてから1週間。
前もスキンシップは多かったけど、いつにも増してスキンシップが増えてきた。
「凛、今日のご飯何?」
「っ・・・!?鮭の塩焼き・・・」
朝、朝食の準備をしている時に後ろから抱きついてきたり──
「あ、凛。一緒に帰ろ?」
「っ・・・!?う、うん・・・。!?」
「さ、帰ろ」
バイト終わりに必ず迎えに来て、手を繋いで家に帰ったり──
「凛、充電させて?」
「っ!?・・・ど、どうぞ・・・」
家にいる時は、私の隣に来て肩にもたれかかって来たり──
終始ドキドキさせられっぱなしだった。
これ、アプローチされてる・・・ってこと・・・?
前までは、可愛い!尊い!なんて思ってたけど、最近は可愛いと思えなくなってきた。
自分の部屋でクッションを抱きしめながら考えていると、コンコンッとノックの音が聞こえてくる。
「凛、入っていい?」
「!?」
扉越しに聞こえてきたのは、奈央樹くんの声。
その声にビクッと肩を震わせて抱きしめていたクッションを投げ捨てる。
「えっ!?あっ、うん!!良いよ!!」
慌てて布団の中に入りながら奈央樹くんに向かって答える。
なんで布団の中に入ったのかはわからないけど。
ガチャっと扉を開けて中に入ってくる奈央樹くん。
その腕にはいつもの通り枕があった。
「一緒に寝よ」
「う、うん。どうぞ・・・」
「ありがと」
ベッドの隅の方へ行き、奈央樹くんが入れるスペースを開ける。
奈央樹くんは、お礼を言いながら私のベッドへ入ってくる。
奈央樹くんに背を向けるように寝返りを打ってなんとか平常心を取り戻そうとするけど、後ろに感じる奈央樹くんの温もりに嫌でも動揺してしまう。
「・・・ねぇ、凛」
「っ・・・!?なっ・・・なに!」
甘い声で名前を呼ばれたと思ったら、後ろから抱きついてくる奈央樹くん。
たったそれだけなのに、心臓がドキドキして苦しくなってしまう。
「心臓、バクバクいってる・・・ねぇ、どうして?」
「どっ、どうしてって・・・!!」
なぜ心臓が激しく鼓動しているのかを聞かれて言葉につまる。
そんなの、奈央樹くんが近いからに決まってるじゃん・・・!!
「俺が近くにいるから、キンチョーしてる?」
「そ、それは・・・そうだけど・・・」
「そっか。少しは意識してくれてるんだ。嬉しい」
ささやくように聞かれたことに対して、素直に答えると、嬉しそうな声が聞こえてくるのと同時に体に回された腕に少しだけ力がこもった。
「っ・・・ね、寝るなら早く寝てよ・・・!」
「んー・・・ドキドキして寝れないかも」
耳の近くで奈央樹くんの甘い声が聞こえてくるのに耐えかねて、早く寝るように促す。
だけど、奈央樹くんから返ってきたのは寝れない、という言葉だった。
「だっ、だったら・・・こんなことしなければいいんじゃないの?」
「凛にくっつきたいの。・・・だめ?」
「だ、ダメじゃないけど・・・緊張するから・・・」
甘えるような言い方に拒否できない。
だけど、どう足掻いたって緊張するのは緊張する。
「じゃあ・・・やめない」
その言葉と共に、首筋にやわらかくて少し湿っているような感触が触れ、チュッ・・・というリップ音が聞こえてきた。
「つっ・・・!?ちょっ・・・なに・・・!?」
首を押さえて後ろにいる奈央樹くんの方を見る。
だけど、奈央樹くんの顔は見れなかった。
「キスしたくなったから。だめじゃないんでしょ?」
「い、言ったけどっ・・・!それはダメ・・・!」
「ふーん・・・だめなの?」
そういうと、首に当てている手に再びキスを落とす奈央樹くん。
その感触に、ピクッと身体を震わせる。
「だっ、ダメっ・・・!!」
「・・・わかった、大人しく寝るよ」
私の体を解放しながらゆっくりと離れていく奈央樹くん。
だけど、背中越しに感じる奈央樹くんの体温のせいで私の心臓はいつまでもドキドキと高鳴り続けていた。