アイドル様は天然キラー
第7章 それから
奈央樹くんが好きだと気付いてから数日が経った。
気付いてからというもの、いつもに増して奈央樹くんの行動のひとつひとつにドキドキしっぱなしだ。
だけど、この気持ちは奈央樹くんには伝えない。
いや──伝えられない。
ただのオタクの私に、人気アイドルのNAKI──もとい、奈央樹くんが釣り合うはずがない。
この気持ちは、私の胸に秘めておこう。
そんなことを思っている中ニュースを見ていると、NAKIと熱愛報道された女性アイドルが会見をしているのが流れる。
『“熱愛報道されたNAKIとの関係についてですが、私とNAKIは恋人関係です。撮影された時は私とデートしている時のものです”』
フラッシュをたかれながら堂々と言い切った女性アイドルに私は目が点になる。
NAKIと付き合ってる・・・?
奈央樹くんは仕事以外は基本私と過ごしている。
デートをする暇なんて無いはずだ。
そんなことを考えながらニュースを見ていると、Twitterが荒れに荒れ始めた。
“NAKIとあのアイドルが付き合ってるって本当!?”
“まじであり得ない”
“恋人作るなとは言わないけど人は選べ”
他にもかなりの数のツイートがあり、トレンド入りもしてしまっていた。
そして、NAKIの配信のチャンネルにも、同様のコメントがかなりの数来ているのに気付く。
これ、ヤバいんじゃ・・・。
「あー・・・やっぱりこうなったか・・・」
テレビの放送を見ながらリビングに入ってくる奈央樹くん。
その表情は困り果てていた。
「前に無理やりアフターに付き合わされたのをすっぱ抜かれたと思ったら、これがしたかったんだね」
「どういうこと?」
「このアイドルが言ってることは全部デタラメ。俺が好きなのは凛だし、あの人には興味無い」
ソファーに肘をつきながらため息をつく奈央樹くん。
状況が状況なのに、奈央樹くんの何気ない一言にドキッとしてしまう。
私が好きなのは変わらない。
つまりは、このアイドルは嘘をついてるってこと・・・?
「・・・どうにかしなきゃな・・・」
「でも、どうするの・・・?この状況、かなりやばいよ?」
ボソッと呟く奈央樹くんに不安になりながら聞く。
炎上って言っていいほど荒れてる中で、どうにかできるのかな?
「1つ、考えがあるんだ。それでも、炎上を鎮火できるかはわかんないけど・・・凛、協力して」
「え?私?」
「うん、凛じゃないと務まらないから。お願い」
「・・・わかった」
懇願するように私を見つめる奈央樹くんに、コクリと頷く。
だけど、何をやるつもりだろう。