アイドル様は天然キラー
奈央樹くんが何とかすると言ってから半日後──
夜の8時に報道に関することを話すと生配信をするというツイートがされた。
それに対して、“ちゃんと説明して!”や“肯定しないで!!”などというコメントがつく。
大丈夫かな・・・?
不安になりながら時間を待っていると、NAKIの配信が始まった。
『“あー・・・あー・・・聞こえる?”』
NAKIの声が入るのと同時に、早く説明して!!というコメントで溢れ返る。
それを固唾を飲んで見守った。
『“そんなに急かさなくてもちゃんと話すよ。その前に、ちょっといいかな?”』
そう言って、席を外すNAKI。
どうしたんだろう・・・そう思っていると、リビングに奈央樹くんが降りてきた。
「奈央樹くん!?今配信中じゃ──」
「来て」
有無を言わさない態度で私の腕を掴み、2階へと連れていかれる。
そして、部屋の中へと強制連行されてしまった。
手元にあるスマホに映し出される私──それは、他の人も同様で“誰!?”とというコメントが流れている。
「この子は小豆沢 凛。俺の好きな人だよ」
「へ・・・?」
NAKIが言った言葉が理解出来ず、動揺してしまう。
NAKIってば、何を急に言い出すの!?
そんなことしたら、火に油を注ぐようなものだよ!?
「この子には、いつもお世話になってるんだ。俺が配信場所変えたの、見てる人なら気付いたよね?実は、この子の家で配信してたんだ」
「な、NAKI・・・!!それ言ったら──」
それ言ったらさらに炎上しちゃう。
そう言おうとした時、奈央樹くんの唇によって塞がれた。
「っ・・・!?」
「あのアイドルとの記事も報道も全部デマ。俺、この子一筋だから」
私の頬に自分の頬をくっつけながら、堂々と言い切る奈央樹くん。
私は、突然の出来事に固まるしかなかった。
奈央樹くんが・・・NAKIが、私にキスした・・・?
「最近の俺の雰囲気が変わったって言ってたよね?それ、全部凛のおかげだから。俺を推してくれてる人なら・・・凛の事、認めてくれるよね?」
首を傾げながらリスナーに問いかけるNAKI。
その言葉に、反応が返ってくる。
“めっちゃ綺麗な人じゃんヤバ!!”
“あのアイドルよりかは好感持てる”
“あのNAKIにここまで言わせる女なら許せる”
意外にも肯定的なコメントに驚きを隠せない。
てっきり、非難されるものだとばかり思っていたから。
「・・・これなら、安心して口説けるね」
次々と来る肯定的なコメントを読んだNAKIは、私に向かって愛しそうに微笑む。
それを見て、ドキッと心臓が高鳴る。
NAKI・・・自分がさらに炎上するかもしれないのに、わざわざ私の事を伝えるなんて・・・。
私・・・NAKIの想いに答えたい・・・。
私のこの気持ちを・・・NAKIに聞いて欲しい。
愛しさでキュウッと胸が締め付けられる感覚に襲われる。
だけど、その苦しささえ愛おしかった。