アイドル様は天然キラー
奈央樹くんと付き合うようになってから、数週間。
今まで通りにNAKIの配信や番組、ライブなどを見ていた。
たけど、今まで通りじゃないことがあった。
それは──
『“凛は料理が上手なんだ。そのせいで体重増えちゃった”』
『“凛とどうなったか、ですか?付き合い始めました。彼女、可愛いんです”』
番組や配信で私のことに関して聞かれると、必ずと言っていいほど惚気話を始めるのだ。
NAKIのオタクとしてその配信や番組を毎回見るから、その話題も必然と聞くわけで・・・。
嬉しい気持ちと同時に、恥ずかしさがこみ上がってくる。
それを聞く度に顔を覆ってソファーやベットに倒れ込んで悶えることになっていた。
すごく複雑・・・。
うー・・・と唸りながら、テレビ番組を見ていると、奈央樹くんがリビングに顔を出した。
「あ、その番組今日だったんだ」
「奈央樹くん・・・毎回言うけど、律儀に私のこと言わなくていいんだよ・・・?見てて恥ずかしいし・・・」
「だって話したいんだもん。俺の彼女はこんなに可愛いんだぞって」
奈央樹くんは意外とそういうことに対してオープンみたいだ。
わたしの隣に座りながら、頬を撫でる奈央樹くん。
それに対して、ドキドキと心臓が早く鳴り出した。
「っ・・・それを見るこっちの身にもなって・・・恥ずかしいんだよ?」
「恥ずかしがってる凛、可愛いから俺は見たい」
「っ・・・」
髪の毛を耳にかけながら私の顔をのぞきこんでくる奈央樹くん。
いくらたっても奈央樹くんからの可愛いって言葉は慣れないな。
「ほら、すぐに真っ赤になっちゃって・・・可愛い」
「っ・・・見ないで・・・!」
低い声でささやかれて、思わず顔を覆って隠す。
本当、慣れないな〜・・・!!
「やだ。・・・ほら、手ぇよかして。キスしたい」
私の手首を掴んでよかして、私に近付いてくる奈央樹くん。
目を伏せながらその行為を受け入れようとした時、テレビからNAKIの声が聞こえてくる。
それを聞いて瞬時にテレビの方に視線を向けた。
「・・・・・・」
「ごめんっ!!ごめんってば!!」
キスをしようもしていたのを振り切ってNAKIの姿を見ていると、耳を甘噛みされてしまう。
反射的に見ちゃうんだもん!!
「凛の大好きなNAKIは目の前にいるんですけど?」
「んっ・・・だ、だから、ごめんって〜・・・!!」
「やだ、許さない」
首筋に口付けをされたと思ったら、ピリッとした感覚が走る。
ピクっと反応しながら奈央樹くんに謝るけど、許してはくれないみたい。
「・・・俺、NAKIなのに・・・NAKIに嫉妬した・・・」
首元に顔を埋めながら、ポツリと呟く奈央樹くん。
その可愛さに胸が締め付けられる。
「もう・・・こんなことさせるの奈央樹くんだけなのに?」
「だって、キスしようとしたのにNAKIに反応した」
「それは条件反射!・・・もう、許して?」
私の首筋に顔を埋めている奈央樹くんの顔を上げて頬にキスを落とす。
だけど、さっきより機嫌が悪くなってしまった。
「・・・口がいい」
「はいはい」
ムスッとしながら呟く奈央樹くんに思わず笑いながら、キスをする。
少し恥ずかしいけど・・・仕方ない。
口にキスをすると少しだけ機嫌が直ったのかまた私の首筋に顔を埋め始めた。
息が当たって少しくすぐったいけど・・・可愛い。
「・・・凛」
「何?」
「好きだよ」
「うん、私もだよ」
奈央樹くんの背中に手を回しながら、背中をさすった。