アイドル様は天然キラー
数年後──
NAKIは婚約発表会をした。
相手はもちろん、私。
今日は記者会見をするらしく、私を連れて会場へ向かう奈央樹くん。
「・・・ねぇ、本当に私も出なきゃいけないの?テレビに映りたくないんだけど・・・」
会場につき、準備をしている最中に奈央樹くんに問いかける。
スタッフさんに手直しされながら、私の方を向いた。
「だって、凛。1回配信に出てるじゃん。ここで変に顔出さなかったら別の人と婚約するの!?ってなるよ?」
「・・・それもそうだけど・・・」
「俺のファンにも認められてるんだから、胸張りなよ」
奈央樹くんの言葉に、納得してしまう。
数年前にNAKIが炎上した時、無理やり配信に顔を出されたことを思い出す。
その時の配信もアーカイブに乗ってるし、NAKIのファンの中じゃ有名になってしまっている。
今更隠したら、別れたの!?とかってなっちゃうもんね。
「・・・う〜・・・セリフ色々考えたのに飛びそう・・・」
「飛ばしてもいいよ。俺がフォローするし」
記者会見の時間が迫り、緊張のあまりに考えていたセリフを忘れそうになる。
奈央樹くんはNAKIとしてこういうの経験してるだろうけど、私は慣れてないんだよ。
「それではNAKIさん、凛さん。準備お願いします」
「ほら、凛。行くよ」
「う、うん・・・!」
スタッフさんに呼ばれ、会見場へと足を運ぶ。
会見場の中心で立ち止まり顔を上げると、そこにはかなりの人数のカメラマンと記者がいた。
「バイオレットフィス、NAKIの婚約発表との事ですが──」
色んなことを聞かれ、奈央樹くんが毅然とした様子で答え続ける。
私は緊張して何を喋ったのかは覚えていない。
だけど──最後、奈央樹くんが言った言葉だけは鮮明に覚えていた。
「凛とは、意識する前から一緒にいたいと思っていました。俺の伴侶になるのは、凛しかいません」
その言葉を胸に刻みながら、記者さんの指輪を見せてください!という言葉で左手を出す。
奈央樹くんも隣で私の手と手をくっつけて指輪を見せる。
「俺は──凛と婚約できて幸せです」
そう言って、幸せそうに笑う奈央樹くん。
その表情を見て私も思わず笑ってしまう。
後日、婚約発表がテレビで流れるとTwitterでNAKIの幸せそうな表情をしている画像が拡散されていた。
“NAKIのそんな表情を出せるのは凛ちゃんだけ!!”
“一生永遠に爆発してて欲しいカップル”
“NAKIを幸せにできるのは凛だけ!頼んだよ!”
“こんな表情のNAKI見た事ない”
“この人が引き出した顔だと思うと素直に祝福できる”
「ねぇ、奈央樹くん。これ見て。皆奈央樹くんの幸せそうな顔見てツイートしてるよ」
そんなツイートだらけなTwitterを隣にいる奈央樹くんに見せる。
「うわ・・・俺顔ゆるゆるじゃん」
「それだけ幸せってことでしょ?私としては嬉しい限りだよ」
奈央樹くんに寄りかかりながら上目遣いで奈央樹くんのことをみつめる。
「・・・そうだね」
そんな私に、奈央樹くんも体をもたれかけてくる。
次々に拡散されていく私と奈央樹くんの写真を見つめながら左の薬指に光る指輪を見たあと、微笑みあって寄り添った。
【END】