アイドル様は天然キラー
食器の片付けを終え、リビングに戻る。
そこには、NAKIがソファーでスマホをいじりながらくつろいでいた。
改めて考えると、推しが私の家でくつろいでるとかヤバくない?
どんな善行をしたらこんな幸せ空間にいれるわけ?
「あ、終わった?ありがと、凛」
「ミ゛ッ・・・!?・・・いえ!!お気になさらず!!」
リビングに戻ると、NAKIがスマホから顔を上げてお礼を言ってくる。
しかも、何気に下の名前で2回も呼ばれてしまった。
もう卒倒物だってこんなの。
「ご、ゴホン・・・それより、シャワー!浴びてきてください」
「いいの?」
「はい。狭い浴室でもいいのなら、ですが。着替えは兄のものを使ってください」
立ち上がって私の近くに来るNAKIに、手元に用意していたスウェットの上下を渡す。
兄さんもNAKIもそこまで身長変わらないだろうし、問題なく着れるだろう。
「助かるよ。ありがとう、凛」
「ピャッ・・・!?い、いえ!!お風呂場に案内しますね・・・!」
3度目の名前呼びに変な声が出る。
NAKIってあんまり人のこと呼ばないから、なんか新鮮・・・。
リビングを出て廊下の突き当たりにあるお風呂場に向かう。
NAKIは、キョロキョロと辺りを見渡しながら私のあとをついてきている。
その姿がひな鳥みたいでとても可愛い。
「ここがお風呂場です。中に置いてあるものは好きに使ってください。タオル、ここに置いておきますね」
「うん、わかった」
お風呂場の扉を開け、脱衣所の中に入ってタオルを置く。
そして、脱衣所にある洗面台の下の扉からドライヤーを取り出す。
「ドライヤーはここにあるので乾かしてから──ヒギャァア!?」
ドライヤーをセッティングして、NAKIの方に振り返った時、既に上着を脱ごうとしていて、言葉の途中で叫びながらNAKIに背中を向ける。
なっ、ななな、なんで服脱ごうとしてるの!?
「・・・?どうかした?」
なにかありました?と言わんばかりのNAKIの表情に開いた口が塞がらない。
普通誰かいる時に服脱いだりしないよね!?
知り合ってまもない女がいる中なら尚更!!
「どうかしたって・・・なんで私いるのに脱ぐんですか!?」
「うん、だって別に見られても困らないし」
あっけらかんとしているNAKIに、動揺しまくりな私。
当たり前だろう、推しの生着替えなんて刺激が強すぎる。
「と、とにかく!!ドライヤー使ったあとは洗面台の下にしまってください!!いいですね!?」
ドライヤーのしまう場所だけ伝え、NAKIの方を見ないようにして脱衣所から出る。
オタクの私には刺激が強すぎる光景だった。