ロマンスに心酔
「ご迷惑をおかけしてしまってすみません⋯⋯」
「とんでもない。ていうか、また無理したんでしょ」
大学時代、せんぱいの前で起きた貧血の原因は、明らかにテスト前の寝不足だった。
当時1年生で、大学最初のテストだったわたしは、膨大な量のテスト範囲やレポートに要領もわからず、前日に徹夜で猛勉強、昼間に仮眠して、また次の日のテストに向けて徹夜するという、絶対に向いてない体育会系の勉強をしていた。
なんとか最終日までたどり着き、最後のテストが終わったあと、ついでにレポート課題を提出してから帰ろうと教授の研究室に向かう。
───と、身体が限界を迎え、研究室まであと一歩のところで蹲ってしまった。
「(⋯⋯っ、さいあくだ⋯⋯)」
あとちょっとなのに⋯⋯という悔しさと焦りからか、目眩と冷や汗が止まらない。
浅い呼吸を繰り返し、とにかくレポートを提出ボックスに出してしまおう、と、意を決して立ちあがろうとした。
───「大丈夫ですか?」
そのとき、聞き覚えのある声がした。