ロマンスに心酔



コートをお店に預けることすら初めての経験。

窓際の席に案内され、ようやく息をつく。


「はあ、きんちょうします⋯⋯」


「ここまで来たら大丈夫、思う存分満喫しよ。ほら、外めっちゃきれい」


「ほんとだ⋯⋯!」


せっかくの夜景なのに眺める余裕を失っていた。

都会の街並みを見下ろしている。

何枚か写真を撮っていると、店員さんがさっそく料理を運んできてくれた。


「失礼いたします。こちら前菜でございます」


「ありがとうございます」


「それから、本日は彼女様のお誕生日だとお伺いしております。そんなお祝いにぴったりなドリンクをご用意いたしました。ぜひ、本日のお食事を心ゆくまでお楽しみくださいませ」


「ありがとうございます⋯⋯!」


店員さんがにっこりと微笑んでくれる。

おそらく、せんぱいが予約のときに伝えてくれていたのだろう。

もうすでに胸がいっぱいだ。


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