ロマンスに心酔



「なにそれ、めっちゃ危ないじゃん。ほんとに誰にも言ってないの?」


「だ⋯⋯って、確信があるわけじゃないし、直接なにかされたわけでもないし⋯⋯」


「でも青葉は眠れないくらい怖い思いして、結果貧血になったわけでしょ。じゅうぶん被害にあってるじゃん」


「っ、で、でも、誰かに言ったところで⋯⋯」


「おれんち来なよ」


⋯⋯へ?

世界一まぬけな顔をした自信がある。


「ふ、何その顔」


「⋯⋯え、っ、いや、いやいや、え、?」


「だから、おれんち。青葉のことだから、実家は頼りたくないんでしょ。最寄り駅どこ?」


「う⋯⋯っ、え、えっ、と、〇〇です⋯⋯」


「あ、隣じゃん。よかった、近い。応急処置ってかんじだけど、とりあえず今日はおれんちでゆっくり寝て」


「え、いや、そんな⋯⋯え?」


「もし着替えとか取りに行くなら着いてくから、勝手に帰んなよ」


「えっ、いやいやいや、そんな、申し訳ないし、帰りますよ」


「だめだって。おれが心配なの。大丈夫、部屋はいっぱいあるし、とって食ったりしないから」


「えええ⋯⋯」


いや、そんな心配は端からしてませんが⋯⋯


「じゃ、とにかくそういうことで。身体、どう?」


「え、あ、だ、だいぶ、よくなりました⋯⋯」


「よかった。よし、あとちょっと休んで、昼飯一緒に食お」


ゆっくり起き上がりなよ、と、やさしく声がかかる。



⋯⋯とんでもないことになってしまった。

< 13 / 80 >

この作品をシェア

pagetop