ロマンスに心酔
「⋯⋯ほんとは、さ、」
せんぱいがわたしの左手をとり、薬指を撫でる。
「⋯⋯あげたかったんだけど、ひよった」
「⋯⋯指輪?」
「ん。まだ早いかな、とか、いろいろ考えちゃって」
胸がいっぱいになる。
「⋯⋯うれしい、いつか、ほしいです⋯⋯」
「⋯⋯ほんと?もらってくれる?」
「当たり前です⋯⋯!」
というかむしろ、せんぱいこそ、わたしでいいんですか。
頬にキスをされる。
顔を横に向けると、至近距離で目が合う。
「⋯⋯とびきりのやつあげる」
「それまでに、似合うようなひとになります」
「今でも似合うよ」
湯気とともに消えてなくなりそうなほど、儚い未来の約束。
それでも、せんぱいは叶えてくれると、信じられる。
キスをして、微笑み合う。
「ありがとう、だいすき⋯⋯」
「おれも。⋯⋯愛してるよ」
───ずっと、このひとと一緒に、生きていきたい。
そんな風に強く思った、25歳の誕生日。
END.