ロマンスに心酔



電話を切り、はああ、と大きく息を吐き出す。


「(きんちょうした⋯⋯)」


直接話すより緊張するかもしれない。

耳元で声が聞こえることに心臓が慣れていなくて、ずっとどきどきしっぱなしだった。


野菜スープを一口飲む。

やさしい味わいにだんだんと心が落ち着いてくる。


この1週間、せんぱいとは会えていない。

先週末は病み上がりだったのでお家でゆったりと過ごした。

月曜日からは、社内でばったり会えるわけもなく、コミュニケーションは仕事関連かスマホでの連絡のみ。

そういえば、月曜日の昼休みに河野さんに報告したらすっごく喜んでくれて、ランチをご馳走するはずだったのに逆に奢ってもらってしまった。(火曜日にリベンジした)


そんなこんなで、せんぱいと会うのはあの日以来。

あの日のことは、思い出すだけでときめいて胸がきゅうっと苦しくなる。


「(あした、仕事頑張ろ)」


親子丼を食べながら、なんとしても定時で上がってやる、と決意した。


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