ロマンスに心酔
「あ、でさ。都合いいから、青葉の彼氏のふりしていい?」
「!?」
「ほら、ストーカーにはさ、彼氏って言ったほうがぜったい効き目あるじゃん」
それは、そうだろうけど⋯⋯
「う、あ、あの、わたしは、特に支障はないのですが、せんぱいは⋯⋯」
「ふ。おれから言い出してんだから、ないに決まってんじゃん」
「そ、そうですか⋯⋯」
せんぱいが、彼氏(仮)に、なった。
彼氏といっても、ストーカー撃退のための呼称でしかなく、恋人という意味合いや好意なんてものは一切ない。
ないとはわかっていても、なんだかむずむずする。
あの頃から、みんなの憧れの的で、きらきらしていて、かっこよくて、やさしくて。
わたしももちろん、憧れていたしがない後輩のひとりだ。
そんなせんぱいと、いろいろな、本当にいろいろな運が重なって、今この瞬間がある。