ロマンスに心酔
「とりあえず、きょうはもう寝よ。あしたに備えて、体調万全にしような」
「はい。あ、あの、よろしくお願いします⋯⋯」
「ん、こちらこそ」
ごちそうさまをし、皿洗いを買って出ようと思ったら、食洗機があると先手を打たれた。
おとなしく引き下がって食洗機にお任せし、一緒に歯磨きをする。
「いちごだ⋯⋯」
「ミント苦手なんだよ」
意外すぎる。少し恥ずかしそうなせんぱい。
外ではバリバリなせんぱいが、実はいちごの甘い歯磨き粉を使っているなんて。
こんなギャップ、狙ってやってないんだったら、本当に罪なひとだ。
「(沼な予感がする⋯⋯)」
嵌ってしまってはだめな沼。
せんぱいにとっては、危険な状況にある大学の後輩を気にかけているだけに過ぎない。
わたしとは世界がちがうひとだ、心にブレーキをかけて接さないと、あっという間に落ちてしまいそう。
「じゃ、おれは隣の部屋にいるから」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」
わたしがお借りしているお部屋の隣が寝室らしい。
最後に挨拶をしてから、それぞれのお部屋に入った。