ロマンスに心酔
「ストーカー、朝はいないの?」
「朝はあんまり気にならないです」
「たしかに、通勤の人も多いしな」
せんぱいの最寄り駅はどうやら、わたしの最寄り駅から1駅先。
実家から通勤していたときも降りたことはなかったので、どんな駅なのか少し楽しみだ。
「なんか、誰かと通勤するって、すごい新鮮です⋯⋯」
「おれは駅に向かってること自体が新鮮」
「たしかに!そうですよね」
せんぱいと話していることで、自然と目線がいつもより上がる。
ふと周りを見渡してみると、制服を着た学生やリクルートスーツ姿の就活生、同じように会社に向かうひとたち。
みんな頑張ってるなあ、と、なんだか励まされる。
「せんぱい、大学生の頃から車持ってましたよね?」
「ああ、よく覚えてんね」
「みなさんから足にされてたので⋯⋯」
「な、ひどかったよなあいつら」
笑いながら昔話をする。