ロマンスに心酔
前ちゃん、という愛称で慕われていたせんぱいは、すごく人気者で、よく車を出して遊びに行っていたイメージだ。
「あの車は親のお下がりで、3年目の夏に今のに買い換えた」
「そうなんですね!じゃあ通勤はずっと車ですか?」
「うん。今考えるとすっげー生意気だよな」
「ふふふ。かっこいいですよ」
たわいもない話をしながら改札をぬける。
「うわー、めっちゃひといるじゃん」
「結構満員電車なんです⋯⋯」
「出社前から毎朝これってきつくない?青葉、頑張ってんね」
「もう慣れましたけど、最初はやっぱりしんどかったです」
「体調崩すでしょ」
「う⋯⋯、はい、懲りずに貧血になってました⋯⋯」
なつかしい。
あんなにひーひー言ってたけど、3年も経てば慣れてくるし、今は距離が短くなったので尚更ましだ。